「——探偵様、探偵様。パノラマ島キネマ探偵事務所様
僕は奇々怪界なる事件を貴方にお救い頂きたいのです」
その「依頼主」は酷く怯えた男であった
彼は何かを伝えるために、いちいち周りを確認してはひそひそと話す男だ
それを相対して聞いている男は——その態度に訝しげな目を向けながらも、にっ、と微笑み
「畏まりました。私、屋島 栄桜郎が、きっちりと解決してしまいましょう!!」
そう、言った
「って訳で、お前らも手伝ってくれよ!報酬はたんまり出すらしいからな!」
にかーっと笑う男は、「事務所に居る四人」を見渡す
その男は探偵らしい格好をしていた。身長は6尺6寸(おおよそ200センチメートル)の大柄な体。筋肉質な体躯
左目は見えているが、右目には包帯を巻いている
「ああ!行って良いぞ!今度女の子に声かけ過ぎたら俺が警察のとっちゃんに怒られるから気をつけてくれよ!マジで!」
紅の言葉ににこやかに返す
「だけど紅の明るいとこにはいつも助かってるからよ、今回も期待してるぜ!」
しかしそこへ素っ頓狂に叫ぶ少年
「不敬である!!!!!」
びし、と紅を指差した彼は、黒い学生服に黒髪
そして白と黒が反転した目をして、怒った表情を見せていた
「貴様は天皇のご厚意に反するか!!天皇は我等を見ておる!!
我等天皇の光に生かされているのだ!!分からないのか!!」
蛇々院網羅(じゃじゃいん もうら)
お国の為なら粉骨砕身少年
天皇は天皇の上に人を作らない
「お前は何もッい、痛い!!!!、だからお前痛い!!!!!やめろぉおこのー!!」
抵抗しようとした彼だが尚もばんばん叩かれ、暫く背中を抑えてごろごろと寝転がる
「そこは私も気になります。私達を連れて行くという事は、『探偵育成』に繋がりそうな事件ですか?」
読書していた子供に続き、少女も声をあげる
10歳ほどの穏やかな少女だ。ハイカラな着物にエプロンを着ており、女給のようにも見える
給仕をしているようで、屋島に紅茶を置きながら問いかけた
八重鶴はなな(やえづるはなな)
女給の幼女。元ミルクホール勤務
「ああ、よーく聞いてくれよ。俺達は館に行く
事件といえば館だ!!探偵と言えば館だ!!
俺達が今回解決しなければならない事件は——」
彼は膝を打ち、楽しそうに笑った
「『館の人狼』を捕まえるのさ!!」
屋島栄桜郎(やしまえいさくろう)
『パノラマ島キネマ探偵事務所』所長、兼
探偵
「……だから、僕は人狼が恐ろしいのです」
集った探偵とその『弟子』達に伝えたのは、依頼人であるびくびくした男であった
月吼真樹人(げつほう まきと)
月吼一家。長男
「人狼は満月に目覚めると言いますが、やはり、そのお、銀の弾丸やらを用意した方がいいのでしょうか」
「いやいや。悪魔で手紙には人狼って書かれてただけであって、よもやよもや本物の人狼ではありますまい。私達が捕まえたいのは悪魔で人間ですよ」
「そうですか……そうですよね?……そうでなければ、僕は恐ろしい……」
彼は落ち込むようにぶつぶつ呟き、身を抱いて泣きそうになった
痩せ細った体躯。その心も体も
「月吼 真樹人さん。私達……いや、飾りっこしない方がいいですね。俺達にお任せ下さい。俺達を信用して下さい」
「……ええ……はい……警察には連絡しておりましたが、聞いてこそすれ、親身にはなってくれませんでした……とても辛かった、馬鹿げたものを見るような目を向けた
僕は貴方達が一番信用出来ます……」
彼は弱々しく伝え、そこでようやく微笑んだ
それから屋島はメモとペンを出し、今までメモしていた内容を更にまとめたページを開き、問いかける
「念のため、事件の内容……もう二、三度お聞きしても?」
「ええ、どうぞ、お聞き下さるのなら」
月吼真樹人は、座り直した
「僕達を狙う誰かがきっと、きっと……失業により職を失った事で、僕らを襲う部下の方々も沢山居ました……」
彼は泣き出しそうに伝えた
「この家の同居人は、長男の僕、そして母親、妹が二人……あとは誰も居ません
使用人も軒並み出て行きました……」
遠慮がちに、最後に伝える
「そして今日が満月の晩
警察の方も数名監視には来てくださってますが、何もなければ朝までには帰ると伝えられました
僕の家の事が気に入らない人が上部に居るようで……最初話を熱心に聞いて下さった警官様すら、今はお会いしたくても会えないと……」
彼は落ち込む
「僕が貴方方に頼みたい用件は、家族の朝までの護衛と、その後日にちをかけても構いませんので
こんな事をした真犯人を見つけて欲しいのです」
やや深刻そうに俯き
「家族を脅す行為をした人間を、僕は許せませんから……」
と、言った
「ああ、紅。良く言った!!
犯人は捕まえるぞ、月吼さんの為にもな
——そして、皆も。やる気と志は一緒の筈だ」
紅をめちゃくちゃに撫でてから、虎も嬉しそうにわしゃわしゃと撫でる
「うむ、この迷える人間を救う事こそ蛇達の天皇への献上となる!!!!!」
帽子ごと撫でられながら選ぶっている蛇々院
そして撫でられながらも、やや真面目な表情を見せるはなな
「ああ……ありがとうございます。ありがとう
皆さんが優しい人達で、僕は……」
蹲って、しまいには今までのものが堪えきれず涙を流し始める真樹人
「そ、そうだ。僕の家族を紹介します、ちょっと待っててください!!」
彼は立ち上がると、ぱたぱたと応接室を出て行き、ドアを閉める
しかし暫くしてから、ドアの向こうから女性の怒鳴り声と物を叩くような音がした
数分ほどそれは続いたが、落ち着いた頃にドアにぱたぱたと近付いてくる音がする
バァン、と大きい音を立ててドアが開かれた
勢い良く開いた先には、やつれた女性。くねった黒髪と容姿が美しいながらもヒステリックな声で怒鳴ってかた
化粧も濃く、装飾やドレスも派手である
「金を払った以上出て行けとは言えませんわ!!ですが貴方方を呼んだのは息子が勝手にやった事!
どうか嫌気が指しましたらお代も貰わずに出て行って下さいな!!私達には貴方方に払うお金もありませんので!!」
月吼暁(げつほう あかつき)
月吼一家。母
そう言って、息子と呼ばれた真樹人、そして五歳程の男女の双子がドアに向かって引きずり出された
「部屋に来ないでと言ったでしょう!!穀潰しが!!ガキ!!」
汚い言葉で罵ったのち、彼らは床に転がった
咄嗟に真樹人が双子を庇ったので、何とか床に幼子が叩きつけられるのは避けられた
「おい!!アンタ!!」
さしもの探偵も怒ったのか、怒鳴ろうとした直前にドアを閉められる
すみません、すみませんと真樹人が探偵と子供達に平謝りし、双子を丁寧に立たせてから起き上がった
「母です、ええと、月吼 暁……こっちが弟との月吼 韻と妹の月吼 炎です」
二人はきょと、と皆を見渡した
泣いていた後もあり、鼻も呆然とすすっている
「ごめんな二人とも、ご挨拶してくれるか」
「こんにちは」
「こんにちは……」
二人は頭を下げた
月吼韻(げつほう いん)
月吼一家。次男 炎の兄であり双子
月吼炎(げつほう えん)
月吼一家。長女 韻の妹であり双子
「……くれなおねえちゃんですか?」
「だめ、炎。おねえちゃんじゃなくてくれなさんですよ」
「そっか……くれなさん……はじめまして……」
二人は撫でられた際にびくりと震えたが、今までの緊張がそこで脱力出来たらしく、ほっとした表情で紅を見ていた
「紅さん、……その子達、呼吸が乱れ始めてます。過呼吸かもしれない……」
はななが彼女らに駆け寄り、手渡したハンカチで紅が炎を労るのを確認すると、小さな手提げからもう一枚綺麗なふきんを取り出して韻の口に当てた
「ああ、すみません紅様、お手間を……
二人は過呼吸になりやすいんです。母がこんな風に荒れる夜は特に……」
「お袋さんは何であんな……」
屋島の問いかけに、彼は困り果てたように答える
「あの人は僕の父の金目当てに結婚したような人で……
色々な事がなし崩しで金も無くなった今、あんな風に怒鳴り散らす事が増えたんです
僕らの事だって本当は厄介者としか見てないようで、無理矢理家を追い出そうとした日もありました
その時、僕はいずれ二人を連れて家を出ようと母と約束しております。僕らはあの人にとって忌み深き存在なのです
僕は前の母の子供ですが、韻と炎は二人の子供です。僕と歳も離れてるでしょう」
言われてみると、真樹人は十代の終わり、二十代に差し掛かるほどに見える
「二度結婚しているんですか?」
「ええ、僕は最初の妻が母親です。二人はつまらぬ喧嘩で離婚をしました
母親は田舎に追い出されたのですが、僕は本来ならこの会社を継ぐ予定でしたので、家に無理矢理置かれ……」
話すうちに自分の身の回りを振り返って疲れて来たのか、彼は言葉尻が弱くなった
それを察した屋島が「すまん、そうか、ありがとう」と声をかけ、顎に手をやった
「あとは警察が三人、だよな?家に今居るのは……」
「ええ、僕がしっかり確認したので……この家には彼ら以外居ませんよ」
「であれば、ひとまずは俺達は何処で監視をしていればいい?
護衛ならば全員あまり散り散りにならない方がいい気もするが」
「母は部屋にいるとのことです」
「ああ……うーん、しかしだな……護りきれんだろう
この家の部屋のドアは施錠出来るものか?」
「はい、窓も鍵をかけれます」
「そうか」
屋島は頷くと、ひとまず「応接室に、月吼さん兄弟三人だけで居てくれますか」と伝えた
「暁さんは女性の方がいいか?警察の人に頼むか……?」
「ええ、僕も……男手をいくつか母の方に送って頂けるのであれば……
母の部屋、ドア前の護衛であれば、母もそううるさくはしない筈です……」
警察の方を二人お願い出来ないか頼んで来ます、と彼が立ち上がった所で、彼は場を和やかにさせようと微笑んだ
昼の光が窓から溢れて居る。壁際に置かれている大きな時計は、十二時を差していた
「僕、皆さんに昼食を振舞いましょうか
出前ものを頼んでもいいんですけれど……ああそうだ、警察の方にもお茶をお代わりしないと」
「韻と炎は手伝わなくて良いからね」と伝えるとぱたぱたと駆けていく
「あ、じゃあ私も行きます」
はななが急いで彼に着いて行く
屋島は、昼食を作ると言いだした真樹人に「ええ、あ、すまない」と驚いた顔で
蛇々院は真顔でぐーーーとデカい腹の音を鳴らしていた
「そうだなぁ……しかし変に気を使い回る人だな。……いや、あれは……」
虎に答えた後、ぼそり、と屋島が呟いた
それを韻と炎は見送ってから、紅に向き直った
炎は抱き上げられ、息苦しそうながらもほ、とした顔で紅を見ている
韻はまだ過呼吸が続いてるらしく、ふきんで口元を押さえていた
「くれなおねえちゃん……」
不安そうに呟いた彼女は、落ち込んだ様子だった
家の雰囲気が悪いことに対する自責の念でもあるのだろう
「おねえちゃん……ありがとう
あのね、おかあさまもたすけてください。おかあさまは、わたしたちのおかあさまなんです……
おかあさまは、おおかみさんにころされてほしくない……」
軽く泣き出しながら、ドレスの幼女は紅に抱きつく
屋島は少し思考していたようだが、気を取り直すように皆を見渡した
「はななは居ねぇけど……探偵弟子諸君、大丈夫かな?引き際を考えるのも優れた探偵として在るべき姿だぞ」
その問いかけに、蛇々院は一言
「蛇は腹が減った!!」
とだけ言って、むすっと座り込んでいた
「蛇の能力を使う時が来るか!?否、来るだろう!!だから待つ!!」
それを聞いて、屋島は笑った
韻はそれを見ると、安心したようにくしゃ、と泣き出し
「う、うう、ううう」
彼女に抱き着いて、暫し泣き始めた
「ああ、俺も行こう
危ないしな。網羅はここに待っててくれ」
すたすたと素で早足な彼は廊下へ向かう虎に、同じようにすたすたと着いて行く屋島
蛇々院はそれにも返事をせず、ただ不機嫌な目で腹を空かしていた
昼食はトーストサンドイッチやおにぎりだった。大人数用に作った為か、量が多い
更に味の濃い唐揚げ、天ぷらまで出して来た
「海老ですか!?こんなに高いものまで」
「今日は探偵や警察の方々がいらっしゃいますので、少々奮発してしまいました
借金もあるとはいえ……何、僕が稼げばいい話です。今度土方をすると母と約束したので……」
「お客様ですから」と疲れた様子で微笑み、またいそいそと準備をする
屋島が流石に困惑した表情ではある
蛇々院は気にせずもりもりと食べ、はななは思いっきり料理をして楽しかったらしく、にこにこと嬉しそうに笑っていた
屋島は少し思案しながらも、料理に手を伸ばす。こっそりと、やや時間をかけて毒が無いか等確認しつつ食べた
「すみません、探偵の仕事柄、こうしないと落ち着かないもんで」
「いえいえ、お気になさらず」
真樹人は、顔を汚しながら食べている双子の世話をしながらまた笑った
「天つゆですか?」
えーと、と思い出すはなな
「私は特に変なことは……時々溜息は吐いてましたけど、私に話してくださったり
ああ、沢山気は使ってくださいましたよ。油が跳ねて火傷してませんか?とか……」
ーーそう、真樹人はやたらと人に気を使う
顔色を伺う様な、びくびくとした態度は常ではあるものの、無理に笑ってまで必死に場を和ませようとする
「それに多分、彼はお料理に薬とかは仕込んでませんよ。粉薬や錠剤を入れた時の様な音はしませんでしたし」
彼女はこっそりと耳打ちしたのち、「お塩忘れました!」とはっと我に帰ってぱたぱたと台所に向かった
「では、母は母の寝室に。警察の方を二名
応接室には僕と弟と妹。探偵の皆さん五名警察の方を一名
僕は弟と妹のそばにおります」
そうして彼はソファに腰掛けると、眠たげな双子に毛布をかける
絵本やおもちゃを脇に寄せ、そうして彼らをぽんぽんと叩いて寝かせた
時計が進んで行く
時々お茶のお代わりをしたり、寒く無いか毛布はいるかと探偵や警察に気を使う
それを断ったり受け入れたり手伝ったりするうちに、時計が12を差した時
部屋のシャンデリアの電球が、突然パァン!と割れた
「!!」
カーテンを閉めていた部屋は暗闇になり、真樹人が慌てたように叫ぶ
「落ち着け!!燭台は……いや、誰かカーテンを開けろ!!月の光が入る筈だ!!」
屋島が暗闇の中を歩き、ブシャ、と血飛沫が飛ぶような音が聞こえた
鉄の香りも部屋を満たす
はななはその音が響いた瞬間、甲高く短い叫びを上げた
蛇々院はソファから勢いよく立ち上がり身構える
「あ、ああああああああああ!!!!!韻!!!!!韻!!!!!」
真樹人の絶望的な叫びが聞こえ、それを聞いた屋島は窓は「誰か頼む!!」と伝えた
真樹人に向かって庇うように前に飛び込み、あたりを見渡す
その時に探偵は生臭い感触、肉塊に触れた
その真樹人の隣に居た少年は、頭部こそ残っているものの、胴体が『食われた』ように欠落していた
目が虚であり、肩から下腹にかけて食いちぎられたように消失している。溢れた臓器や骨が無残に辺りに散らかっていた
「あ、ああ、……」
その韻の返り血を浴びているのは真樹人と炎だ
真樹人は涙を流しながら口を押さえ、炎はぼけたように呆然とした後、ゆっくりと失禁する
「いんおにいさま……」
「韻……韻……あ、……」
「……お前ら、見れねぇ奴は見るな!!蛇々院、虎、来れるか!」
蛇々院はむすっとした顔でそこに来ると、検視を始める
はななは吐き気を押さえ、その場に蹲るも、堪えきれず部屋を飛び出す
僕は奇々怪界なる事件を貴方にお救い頂きたいのです」
その「依頼主」は酷く怯えた男であった
彼は何かを伝えるために、いちいち周りを確認してはひそひそと話す男だ
それを相対して聞いている男は——その態度に訝しげな目を向けながらも、にっ、と微笑み
「畏まりました。私、屋島 栄桜郎が、きっちりと解決してしまいましょう!!」
そう、言った
*
「って訳で、お前らも手伝ってくれよ!報酬はたんまり出すらしいからな!」
にかーっと笑う男は、「事務所に居る四人」を見渡す
その男は探偵らしい格好をしていた。身長は6尺6寸(おおよそ200センチメートル)の大柄な体。筋肉質な体躯
左目は見えているが、右目には包帯を巻いている
「わーい!事件だ事件だよー!!」
くるくる動物のような髪をした女子が赤いドレスのスカートをくるくる広げながら歩み寄る
「屋島さん、私も行って良いんだよね?
今回は可愛い女の子居そう?綺麗なお姉さんは?」
事件の概要も聞いていないのに行く気満々なのは、動機が不純だからである
鼻息をふんすふんすしながら頬を紅潮させて聞いている
樹坂 紅(いつきざか くれな)
何故か同性の美人に目が無い弱冠十九歳の少女
くるくる動物のような髪をした女子が赤いドレスのスカートをくるくる広げながら歩み寄る
「屋島さん、私も行って良いんだよね?
今回は可愛い女の子居そう?綺麗なお姉さんは?」
事件の概要も聞いていないのに行く気満々なのは、動機が不純だからである
鼻息をふんすふんすしながら頬を紅潮させて聞いている
樹坂 紅(いつきざか くれな)
何故か同性の美人に目が無い弱冠十九歳の少女
「ああ!行って良いぞ!今度女の子に声かけ過ぎたら俺が警察のとっちゃんに怒られるから気をつけてくれよ!マジで!」
紅の言葉ににこやかに返す
「だけど紅の明るいとこにはいつも助かってるからよ、今回も期待してるぜ!」
「えへへ、照れるよ~~」
褒めるようによしよしと撫でる栄桜郎、撫でられて照れ臭そうにはにかむ紅
褒めるようによしよしと撫でる栄桜郎、撫でられて照れ臭そうにはにかむ紅
しかしそこへ素っ頓狂に叫ぶ少年
「不敬である!!!!!」
びし、と紅を指差した彼は、黒い学生服に黒髪
そして白と黒が反転した目をして、怒った表情を見せていた
「貴様は天皇のご厚意に反するか!!天皇は我等を見ておる!!
我等天皇の光に生かされているのだ!!分からないのか!!」
蛇々院網羅(じゃじゃいん もうら)
お国の為なら粉骨砕身少年
天皇は天皇の上に人を作らない
「はいはい!天皇様のお考えは私には分からないけれど、人を愛することは悪いことなわけないじゃない!」
あははと笑って歩み寄るとばんばんと背中を叩く
あははと笑って歩み寄るとばんばんと背中を叩く
「お前は何もッい、痛い!!!!、だからお前痛い!!!!!やめろぉおこのー!!」
抵抗しようとした彼だが尚もばんばん叩かれ、暫く背中を抑えてごろごろと寝転がる
「今回はどういう案件なのですか」
二人がやれわーと騒いでいる中、前髪で目が完全に隠れている少女 ――少年?が読書を中断して屋島を見上げていた
虎(とら)
中性的な目隠れ少年
口数の少ない頭脳派
二人がやれわーと騒いでいる中、前髪で目が完全に隠れている少女 ――少年?が読書を中断して屋島を見上げていた
虎(とら)
中性的な目隠れ少年
口数の少ない頭脳派
「そこは私も気になります。私達を連れて行くという事は、『探偵育成』に繋がりそうな事件ですか?」
読書していた子供に続き、少女も声をあげる
10歳ほどの穏やかな少女だ。ハイカラな着物にエプロンを着ており、女給のようにも見える
給仕をしているようで、屋島に紅茶を置きながら問いかけた
八重鶴はなな(やえづるはなな)
女給の幼女。元ミルクホール勤務
「ああ、よーく聞いてくれよ。俺達は館に行く
事件といえば館だ!!探偵と言えば館だ!!
俺達が今回解決しなければならない事件は——」
彼は膝を打ち、楽しそうに笑った
「『館の人狼』を捕まえるのさ!!」
屋島栄桜郎(やしまえいさくろう)
『パノラマ島キネマ探偵事務所』所長、兼
探偵
月吼館(げつほうかん)
黒と金の豪奢な館でありながらも、茂りの多い森に囲まれているからかどこか暗い雰囲気である
しかし木々で覆われる筈である暗闇は、白く白く眩しいほどの月明かりに照らされていた
美しい光景ではあるのだが、やはり視覚情報からは立ち入りたくは無いという雰囲気を思わせる
そこは帝都の県境内にはしっかりと収まっていながらも、喧騒からおおよそ離れた郊外の森に建設されていた
黒と金の豪奢な館でありながらも、茂りの多い森に囲まれているからかどこか暗い雰囲気である
しかし木々で覆われる筈である暗闇は、白く白く眩しいほどの月明かりに照らされていた
美しい光景ではあるのだが、やはり視覚情報からは立ち入りたくは無いという雰囲気を思わせる
そこは帝都の県境内にはしっかりと収まっていながらも、喧騒からおおよそ離れた郊外の森に建設されていた
「……だから、僕は人狼が恐ろしいのです」
集った探偵とその『弟子』達に伝えたのは、依頼人であるびくびくした男であった
月吼真樹人(げつほう まきと)
月吼一家。長男
「人狼は満月に目覚めると言いますが、やはり、そのお、銀の弾丸やらを用意した方がいいのでしょうか」
「いやいや。悪魔で手紙には人狼って書かれてただけであって、よもやよもや本物の人狼ではありますまい。私達が捕まえたいのは悪魔で人間ですよ」
「そうですか……そうですよね?……そうでなければ、僕は恐ろしい……」
彼は落ち込むようにぶつぶつ呟き、身を抱いて泣きそうになった
痩せ細った体躯。その心も体も
「月吼 真樹人さん。私達……いや、飾りっこしない方がいいですね。俺達にお任せ下さい。俺達を信用して下さい」
「……ええ……はい……警察には連絡しておりましたが、聞いてこそすれ、親身にはなってくれませんでした……とても辛かった、馬鹿げたものを見るような目を向けた
僕は貴方達が一番信用出来ます……」
彼は弱々しく伝え、そこでようやく微笑んだ
それから屋島はメモとペンを出し、今までメモしていた内容を更にまとめたページを開き、問いかける
「念のため、事件の内容……もう二、三度お聞きしても?」
「ええ、どうぞ、お聞き下さるのなら」
月吼真樹人は、座り直した
✳︎
数日前、事件が起きた——脅迫文が届いた
内容は
『没落華族に告ぐ
貴殿ら満月の晩に一人一人月の光の命に従い殺害す
注意されたし
貴殿ら一族の汚職欺瞞は許されざる事やう〻に覚えておくやうに
人狼貴殿らの血筋呪う夜目に焼き付けよ
旭月旗の人狼」
月吼の一族は没落寸前の華族である
というのも、先日までは栄えていた所から一気に落ちぶれた。詐欺罪や汚職金、会社金を私用に肥やしていた件の発覚による没落だった
当然会社は倒産。人からも白い目で見られ、残るは暫く食いつなぐ程度の資金と多額の借金、あとはこの館のみ、である
この家の社長——月吼家の父親は、既に自殺をしている
数日前、事件が起きた——脅迫文が届いた
内容は
『没落華族に告ぐ
貴殿ら満月の晩に一人一人月の光の命に従い殺害す
注意されたし
貴殿ら一族の汚職欺瞞は許されざる事やう〻に覚えておくやうに
人狼貴殿らの血筋呪う夜目に焼き付けよ
旭月旗の人狼」
月吼の一族は没落寸前の華族である
というのも、先日までは栄えていた所から一気に落ちぶれた。詐欺罪や汚職金、会社金を私用に肥やしていた件の発覚による没落だった
当然会社は倒産。人からも白い目で見られ、残るは暫く食いつなぐ程度の資金と多額の借金、あとはこの館のみ、である
この家の社長——月吼家の父親は、既に自殺をしている
「僕達を狙う誰かがきっと、きっと……失業により職を失った事で、僕らを襲う部下の方々も沢山居ました……」
彼は泣き出しそうに伝えた
「この家の同居人は、長男の僕、そして母親、妹が二人……あとは誰も居ません
使用人も軒並み出て行きました……」
遠慮がちに、最後に伝える
「そして今日が満月の晩
警察の方も数名監視には来てくださってますが、何もなければ朝までには帰ると伝えられました
僕の家の事が気に入らない人が上部に居るようで……最初話を熱心に聞いて下さった警官様すら、今はお会いしたくても会えないと……」
彼は落ち込む
「僕が貴方方に頼みたい用件は、家族の朝までの護衛と、その後日にちをかけても構いませんので
こんな事をした真犯人を見つけて欲しいのです」
やや深刻そうに俯き
「家族を脅す行為をした人間を、僕は許せませんから……」
と、言った
「家族が大好きなんだね、真樹人さんは」
紅は眉を下げて感情移入
ぐっと眉をつり上げると拳をつくって屋島に向いた
「屋島さん!!絶対に犯人捕まえよう!!」
ぐっ
虎はすんと口を引き結んだまま真樹人を見ている
紅は眉を下げて感情移入
ぐっと眉をつり上げると拳をつくって屋島に向いた
「屋島さん!!絶対に犯人捕まえよう!!」
ぐっ
虎はすんと口を引き結んだまま真樹人を見ている
「ああ、紅。良く言った!!
犯人は捕まえるぞ、月吼さんの為にもな
——そして、皆も。やる気と志は一緒の筈だ」
紅をめちゃくちゃに撫でてから、虎も嬉しそうにわしゃわしゃと撫でる
「うむ、この迷える人間を救う事こそ蛇達の天皇への献上となる!!!!!」
帽子ごと撫でられながら選ぶっている蛇々院
そして撫でられながらも、やや真面目な表情を見せるはなな
「ああ……ありがとうございます。ありがとう
皆さんが優しい人達で、僕は……」
蹲って、しまいには今までのものが堪えきれず涙を流し始める真樹人
「そ、そうだ。僕の家族を紹介します、ちょっと待っててください!!」
彼は立ち上がると、ぱたぱたと応接室を出て行き、ドアを閉める
しかし暫くしてから、ドアの向こうから女性の怒鳴り声と物を叩くような音がした
数分ほどそれは続いたが、落ち着いた頃にドアにぱたぱたと近付いてくる音がする
「………」
「あやや喧嘩かな」
喧騒の様子を聴いて少し焦るように口許をひきつらせている虎と、デリカシーが無い一言紅
「あやや喧嘩かな」
喧騒の様子を聴いて少し焦るように口許をひきつらせている虎と、デリカシーが無い一言紅
バァン、と大きい音を立ててドアが開かれた
勢い良く開いた先には、やつれた女性。くねった黒髪と容姿が美しいながらもヒステリックな声で怒鳴ってかた
化粧も濃く、装飾やドレスも派手である
「金を払った以上出て行けとは言えませんわ!!ですが貴方方を呼んだのは息子が勝手にやった事!
どうか嫌気が指しましたらお代も貰わずに出て行って下さいな!!私達には貴方方に払うお金もありませんので!!」
月吼暁(げつほう あかつき)
月吼一家。母
そう言って、息子と呼ばれた真樹人、そして五歳程の男女の双子がドアに向かって引きずり出された
「部屋に来ないでと言ったでしょう!!穀潰しが!!ガキ!!」
汚い言葉で罵ったのち、彼らは床に転がった
咄嗟に真樹人が双子を庇ったので、何とか床に幼子が叩きつけられるのは避けられた
「おい!!アンタ!!」
さしもの探偵も怒ったのか、怒鳴ろうとした直前にドアを閉められる
すみません、すみませんと真樹人が探偵と子供達に平謝りし、双子を丁寧に立たせてから起き上がった
「母です、ええと、月吼 暁……こっちが弟との月吼 韻と妹の月吼 炎です」
二人はきょと、と皆を見渡した
泣いていた後もあり、鼻も呆然とすすっている
「ごめんな二人とも、ご挨拶してくれるか」
「こんにちは」
「こんにちは……」
二人は頭を下げた
月吼韻(げつほう いん)
月吼一家。次男 炎の兄であり双子
月吼炎(げつほう えん)
月吼一家。長女 韻の妹であり双子
子供達が乱暴にされた時、空気が凍る音を虎は聞いていた
ちらりと、厚く覆った前髪の下で視線をそちらへ向けたであろう虎
鋭い眼を扉の向こうに一瞬向けていた紅が——真樹人達の方に歩んでいくのを背中越しに見た
(……樹坂は女の子に手を上げる人には露骨に態度変わるもの)
虎は固唾を呑んでいた
「大丈夫?炎ちゃん、韻くん
はじめまして、私紅っていうんだ」
笑顔を向けて膝をつき、安心させようと二人を撫でようとする
ちらりと、厚く覆った前髪の下で視線をそちらへ向けたであろう虎
鋭い眼を扉の向こうに一瞬向けていた紅が——真樹人達の方に歩んでいくのを背中越しに見た
(……樹坂は女の子に手を上げる人には露骨に態度変わるもの)
虎は固唾を呑んでいた
「大丈夫?炎ちゃん、韻くん
はじめまして、私紅っていうんだ」
笑顔を向けて膝をつき、安心させようと二人を撫でようとする
「……くれなおねえちゃんですか?」
「だめ、炎。おねえちゃんじゃなくてくれなさんですよ」
「そっか……くれなさん……はじめまして……」
「おねえちゃんでいいよ」
怒りやら申し訳なさや愛しさやらで叫びそうなのを押さえて優しい声と笑顔で即答する
怒りやら申し訳なさや愛しさやらで叫びそうなのを押さえて優しい声と笑顔で即答する
二人は撫でられた際にびくりと震えたが、今までの緊張がそこで脱力出来たらしく、ほっとした表情で紅を見ていた
「紅さん、……その子達、呼吸が乱れ始めてます。過呼吸かもしれない……」
「!…ありがとう、はななちゃん」
はななが彼女らに駆け寄り、手渡したハンカチで紅が炎を労るのを確認すると、小さな手提げからもう一枚綺麗なふきんを取り出して韻の口に当てた
「ああ、すみません紅様、お手間を……
二人は過呼吸になりやすいんです。母がこんな風に荒れる夜は特に……」
「お袋さんは何であんな……」
屋島の問いかけに、彼は困り果てたように答える
「あの人は僕の父の金目当てに結婚したような人で……
色々な事がなし崩しで金も無くなった今、あんな風に怒鳴り散らす事が増えたんです
僕らの事だって本当は厄介者としか見てないようで、無理矢理家を追い出そうとした日もありました
その時、僕はいずれ二人を連れて家を出ようと母と約束しております。僕らはあの人にとって忌み深き存在なのです
僕は前の母の子供ですが、韻と炎は二人の子供です。僕と歳も離れてるでしょう」
言われてみると、真樹人は十代の終わり、二十代に差し掛かるほどに見える
「二度結婚しているんですか?」
「ええ、僕は最初の妻が母親です。二人はつまらぬ喧嘩で離婚をしました
母親は田舎に追い出されたのですが、僕は本来ならこの会社を継ぐ予定でしたので、家に無理矢理置かれ……」
話すうちに自分の身の回りを振り返って疲れて来たのか、彼は言葉尻が弱くなった
それを察した屋島が「すまん、そうか、ありがとう」と声をかけ、顎に手をやった
「あとは警察が三人、だよな?家に今居るのは……」
「ええ、僕がしっかり確認したので……この家には彼ら以外居ませんよ」
「であれば、ひとまずは俺達は何処で監視をしていればいい?
護衛ならば全員あまり散り散りにならない方がいい気もするが」
「母は部屋にいるとのことです」
「ああ……うーん、しかしだな……護りきれんだろう
この家の部屋のドアは施錠出来るものか?」
「はい、窓も鍵をかけれます」
「そうか」
屋島は頷くと、ひとまず「応接室に、月吼さん兄弟三人だけで居てくれますか」と伝えた
「本当は御母様も共に同じところにいて欲しいのですが、……意思を尊重した方が良いのかもしれないのです」
虎は含んだ言い方で屋島に応えた
無理矢理連れてきたとしても、先程の様子を見た以上犯人から護る以前の問題に成りうる故に
「じゃあ、あのクソバ……暁サンを護衛するのは誰なの屋島さん?」
紅はよいしょと炎を抱き上げようとしながら聞く
虎は含んだ言い方で屋島に応えた
無理矢理連れてきたとしても、先程の様子を見た以上犯人から護る以前の問題に成りうる故に
「じゃあ、あのクソバ……暁サンを護衛するのは誰なの屋島さん?」
紅はよいしょと炎を抱き上げようとしながら聞く
「暁さんは女性の方がいいか?警察の人に頼むか……?」
「ええ、僕も……男手をいくつか母の方に送って頂けるのであれば……
母の部屋、ドア前の護衛であれば、母もそううるさくはしない筈です……」
警察の方を二人お願い出来ないか頼んで来ます、と彼が立ち上がった所で、彼は場を和やかにさせようと微笑んだ
昼の光が窓から溢れて居る。壁際に置かれている大きな時計は、十二時を差していた
「僕、皆さんに昼食を振舞いましょうか
出前ものを頼んでもいいんですけれど……ああそうだ、警察の方にもお茶をお代わりしないと」
「韻と炎は手伝わなくて良いからね」と伝えるとぱたぱたと駆けていく
「あ、じゃあ私も行きます」
はななが急いで彼に着いて行く
屋島は、昼食を作ると言いだした真樹人に「ええ、あ、すまない」と驚いた顔で
蛇々院は真顔でぐーーーとデカい腹の音を鳴らしていた
「……殺されるかもしれないっていう時に、よく料理なんて作れますね」
虎は心配や感心の類いの意味合いで言ったが、本人が聞いていたら余程失礼な物言いだろう
近くに居る屋島と髪の下に隠れている目を合わせる
虎は心配や感心の類いの意味合いで言ったが、本人が聞いていたら余程失礼な物言いだろう
近くに居る屋島と髪の下に隠れている目を合わせる
「そうだなぁ……しかし変に気を使い回る人だな。……いや、あれは……」
虎に答えた後、ぼそり、と屋島が呟いた
それを韻と炎は見送ってから、紅に向き直った
炎は抱き上げられ、息苦しそうながらもほ、とした顔で紅を見ている
韻はまだ過呼吸が続いてるらしく、ふきんで口元を押さえていた
「くれなおねえちゃん……」
不安そうに呟いた彼女は、落ち込んだ様子だった
家の雰囲気が悪いことに対する自責の念でもあるのだろう
「……大丈夫だよ
私はこう見えても強いから、ちゃんと二人のことも、真樹人さんのことも護るよ」
「あと暁サンもね」と最後は不自然なニッコリ顔で付け加える
私はこう見えても強いから、ちゃんと二人のことも、真樹人さんのことも護るよ」
「あと暁サンもね」と最後は不自然なニッコリ顔で付け加える
「おねえちゃん……ありがとう
あのね、おかあさまもたすけてください。おかあさまは、わたしたちのおかあさまなんです……
おかあさまは、おおかみさんにころされてほしくない……」
軽く泣き出しながら、ドレスの幼女は紅に抱きつく
屋島は少し思考していたようだが、気を取り直すように皆を見渡した
「はななは居ねぇけど……探偵弟子諸君、大丈夫かな?引き際を考えるのも優れた探偵として在るべき姿だぞ」
その問いかけに、蛇々院は一言
「蛇は腹が減った!!」
とだけ言って、むすっと座り込んでいた
「蛇の能力を使う時が来るか!?否、来るだろう!!だから待つ!!」
それを聞いて、屋島は笑った
「——分かってるよ!屋島さん
安心してよ、ちゃんとみんな護るから」
紅も炎に改めて笑いかけると、一度頭に頬を擦り寄せて、韻を見ると膝を落として片手を広げた おいでと言わんばかりの笑みで
安心してよ、ちゃんとみんな護るから」
紅も炎に改めて笑いかけると、一度頭に頬を擦り寄せて、韻を見ると膝を落として片手を広げた おいでと言わんばかりの笑みで
韻はそれを見ると、安心したようにくしゃ、と泣き出し
「う、うう、ううう」
彼女に抱き着いて、暫し泣き始めた
「……護るよ、」
よしよしと紅は二人を抱き締める
屋島の言葉に、虎も応えるように頷く
「屋敷を見て来ます
食事がもし早く来ましたら要りませんからお先にどうぞと」
どうやら彼は進んで戦う、守るという宣言はしないメンバーらしい
その代わりの役割なのか——情報収集のためなら、意外に行動派であるようだ
よしよしと紅は二人を抱き締める
屋島の言葉に、虎も応えるように頷く
「屋敷を見て来ます
食事がもし早く来ましたら要りませんからお先にどうぞと」
どうやら彼は進んで戦う、守るという宣言はしないメンバーらしい
その代わりの役割なのか——情報収集のためなら、意外に行動派であるようだ
「ああ、俺も行こう
危ないしな。網羅はここに待っててくれ」
すたすたと素で早足な彼は廊下へ向かう虎に、同じようにすたすたと着いて行く屋島
蛇々院はそれにも返事をせず、ただ不機嫌な目で腹を空かしていた
❇︎
昼食はトーストサンドイッチやおにぎりだった。大人数用に作った為か、量が多い
更に味の濃い唐揚げ、天ぷらまで出して来た
「海老ですか!?こんなに高いものまで」
「今日は探偵や警察の方々がいらっしゃいますので、少々奮発してしまいました
借金もあるとはいえ……何、僕が稼げばいい話です。今度土方をすると母と約束したので……」
「お客様ですから」と疲れた様子で微笑み、またいそいそと準備をする
屋島が流石に困惑した表情ではある
蛇々院は気にせずもりもりと食べ、はななは思いっきり料理をして楽しかったらしく、にこにこと嬉しそうに笑っていた
屋島は少し思案しながらも、料理に手を伸ばす。こっそりと、やや時間をかけて毒が無いか等確認しつつ食べた
「すみません、探偵の仕事柄、こうしないと落ち着かないもんで」
「いえいえ、お気になさらず」
真樹人は、顔を汚しながら食べている双子の世話をしながらまた笑った
「うっわあ!!おいしそー!海老とか久しぶりだよおいただきまあす!!」
蛇々院と一緒に嬉しそうに頬張り始める紅
虎もその横で屋島のように考えるそぶりでいたが、ちゃっかり流れるような手つきで海老の天ぷらを少しかじったあと、静かに立ち上がって
やや食卓から離れ脇に居る彼女の隣まで歩み寄る
蛇々院と一緒に嬉しそうに頬張り始める紅
虎もその横で屋島のように考えるそぶりでいたが、ちゃっかり流れるような手つきで海老の天ぷらを少しかじったあと、静かに立ち上がって
やや食卓から離れ脇に居る彼女の隣まで歩み寄る
「天つゆですか?」
「違うよ」
「八重鶴、真樹人さんはどういった様子でお料理をしてましたか?」
のほほんと問い掛けたはななにそう返してから、少し真面目な声色で、問い掛ける
「八重鶴、真樹人さんはどういった様子でお料理をしてましたか?」
のほほんと問い掛けたはななにそう返してから、少し真面目な声色で、問い掛ける
えーと、と思い出すはなな
「私は特に変なことは……時々溜息は吐いてましたけど、私に話してくださったり
ああ、沢山気は使ってくださいましたよ。油が跳ねて火傷してませんか?とか……」
ーーそう、真樹人はやたらと人に気を使う
顔色を伺う様な、びくびくとした態度は常ではあるものの、無理に笑ってまで必死に場を和ませようとする
「それに多分、彼はお料理に薬とかは仕込んでませんよ。粉薬や錠剤を入れた時の様な音はしませんでしたし」
彼女はこっそりと耳打ちしたのち、「お塩忘れました!」とはっと我に帰ってぱたぱたと台所に向かった
そんな彼女の背に
「天つゆも下さい」
と言って、顎に手を当てると虎はまた思案に没していた
「天つゆも下さい」
と言って、顎に手を当てると虎はまた思案に没していた
「では、母は母の寝室に。警察の方を二名
応接室には僕と弟と妹。探偵の皆さん五名警察の方を一名
僕は弟と妹のそばにおります」
そうして彼はソファに腰掛けると、眠たげな双子に毛布をかける
絵本やおもちゃを脇に寄せ、そうして彼らをぽんぽんと叩いて寝かせた
時計が進んで行く
時々お茶のお代わりをしたり、寒く無いか毛布はいるかと探偵や警察に気を使う
それを断ったり受け入れたり手伝ったりするうちに、時計が12を差した時
部屋のシャンデリアの電球が、突然パァン!と割れた
「!!」
カーテンを閉めていた部屋は暗闇になり、真樹人が慌てたように叫ぶ
「落ち着け!!燭台は……いや、誰かカーテンを開けろ!!月の光が入る筈だ!!」
屋島が暗闇の中を歩き、ブシャ、と血飛沫が飛ぶような音が聞こえた
鉄の香りも部屋を満たす
はななはその音が響いた瞬間、甲高く短い叫びを上げた
蛇々院はソファから勢いよく立ち上がり身構える
「あ、ああああああああああ!!!!!韻!!!!!韻!!!!!」
真樹人の絶望的な叫びが聞こえ、それを聞いた屋島は窓は「誰か頼む!!」と伝えた
真樹人に向かって庇うように前に飛び込み、あたりを見渡す
その時に探偵は生臭い感触、肉塊に触れた
シャッ、とカーテンが開け放たれる
それを行った警察の男が、緊迫した表情で窓と月明かりを背に部屋を見る
「あ、あ、ぁ」
依頼人の叫び声から既に分かっていたはずの現実
だがそれはあまりにも悲惨な景色だった
それを行った警察の男が、緊迫した表情で窓と月明かりを背に部屋を見る
「あ、あ、ぁ」
依頼人の叫び声から既に分かっていたはずの現実
だがそれはあまりにも悲惨な景色だった
その真樹人の隣に居た少年は、頭部こそ残っているものの、胴体が『食われた』ように欠落していた
目が虚であり、肩から下腹にかけて食いちぎられたように消失している。溢れた臓器や骨が無残に辺りに散らかっていた
「あ、ああ、……」
その韻の返り血を浴びているのは真樹人と炎だ
真樹人は涙を流しながら口を押さえ、炎はぼけたように呆然とした後、ゆっくりと失禁する
「いんおにいさま……」
「韻……韻……あ、……」
「…………あ」
紅も膝から崩れ落ち言葉を失う
瞳は乾いているのに目尻から涙が伝った
紅も膝から崩れ落ち言葉を失う
瞳は乾いているのに目尻から涙が伝った
「……お前ら、見れねぇ奴は見るな!!蛇々院、虎、来れるか!」
蛇々院はむすっとした顔でそこに来ると、検視を始める
はななは吐き気を押さえ、その場に蹲るも、堪えきれず部屋を飛び出す
「……、」
虎は歩み寄って三歩距離を空けた場所から認める
表情は隠れているが顔色は真っ青なことが分かるかもしれない
「"人狼" か…………」
やや息苦しそうに警察は死体を見て呟いた
虎は歩み寄って三歩距離を空けた場所から認める
表情は隠れているが顔色は真っ青なことが分かるかもしれない
「"人狼" か…………」
やや息苦しそうに警察は死体を見て呟いた
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